ロングセラーを続けている大宮司朗先生の「神法道術直伝シリーズ」……伝法料が一法何万円もする未公開の重秘の修法を満載した本シリーズは、他に類書がなく、古神道のデファクト・スタンダードとしてすでに書架に揃えておられる方も多いかと存じます。しかし、最近、古神道に興味をもたれた方からは、いったいどのような内容なのか、どの本から読み進めればよいのかという質問が多く、寄せられています。そこで年初にあたり、弊社社主による問答形式の説明を掲載することにしました。
――八幡書店の刊行物にはいくつかの柱がありますが、その中心になるのが大宮司朗先生の神法道術直伝シリーズですね。
武田 そうですね。古くからのお客様はすでにお持ちかと思いますが、最近になって古神道に興味を持たれて、いったいどこから入ったらいいのかわからないという方には、まずこのシリーズから揃えて頂きたいと考えております。
古神道 最後の秘儀継承者・大宮司朗先生
――まず大宮先生とはどのような方なのか、来歴についてご存知ない方もおられるようなので、差し支えない範囲で教えて頂ければと思います。
武田 これはもうこの道の方なら誰でもご存知のことですが、大宮先生は、幽真界に肉身をもって出入し、神界の玄秘を現界にもたらされたある神人のご縁戚で、幼少の頃よりその謦咳に接し薫陶を受けてこられたわけです。そのような霊的な環境に身を置かれていたうえにたいへんな勉強家でもあり、なんと小学生のときに松本道別の『霊学講座』を読破し、霊術の基本はすべてその頃にご自分でいろいろ実験し会得されたのです。
――小学生にして松本道別『霊学講座』を読破されたというのは尋常ではないですね。
武田 いわゆる神童です。先生も『霊学講座』には思い入れがあって、三十年前に先生の解説付きで復刻しました。復刻版なので旧漢字、旧仮名でそれを難しいという人もおられますが、先生は小学生のときに読破されたのです。奥秘に触れるためにはそれくらいの道骨が必要なのです。そういう先生ならばこそ、数奇な神縁をたどる道程で様々な流れの重秘の神法道術を授かり、玄学の秘奥に通じるに至り、古神道の最後の秘儀継承者ともいうべきお立場におられるのです。そういうお立場もつらいものがあって、妄りに重秘の奥義を漏らせば彼の界より泄法の罪に問われ、また何も伝えなければ断道の罪に問われます。そのため先生は重秘の伝につきましては、客筋のよい八幡書店の神法道術直伝シリーズにおいてのみ明らかにされているわけです。
――いずれも価格は1万円以上しますが、それだけのことはあるのでしょうか?
武田 神法道術シリーズには、本来ならば一法で3万円というような修法や符咒が惜しげもなく公開されています。昔は本では神法道術は学べませんでした。すべて口伝ですから時間と交通費をかけて伝授してもらいに行った、それが例えば『玄秘修法奥伝』には未公開の古神道の印咒だけで百法も収録されているのです。ですからあまりこういう言い方はしたくないのですが、どれか一法だけでもマスターすれば元は十分すぎるくらいとれるわけです。ぜんぶマスターされたらそれこそ値千金です。
――逆に言うと、どれか一法だけでもマスターすればいいと考えれば、学ぶ側としても気楽ですね。
武田 そうですね。どの本にも必ずマスターすべき応用性の広い術から、かなり特殊な術まで収録されています。『玄秘修法奥伝』でしたら、霊符謹製の伝や拝神印や注連の印あたりは必須ですが、そうでないもの、個々人の修道の目標に応じて修得すべきものもあります。そこはその方の気線の問題で、ある方は他の印には見向きもせずに龍神印ばかり何年も修法されていたところ、阪神大震災の起こる日の払暁修法中にドン、ドンという音が聞こえたそうです。それで地震のときもまわりは全滅してその方の家だけ助かったというような例もあるわけです。
――そんな不思議なこともあるんですね。
武田 そういう話は日常茶飯事で、多賀大社の社前で伊邪那岐大神の印を結んだら汗がだらだら流れてぶるぶる震えだしてとまらない。それで倒れてしまった。他の参拝者の方に助けてもらって家に帰った。この方は血糖値がかなり高くてちょうど翌日が定期検査の日だったのですが、全くの正常値になっていたので医者が首をかしげたり、そんな話はいくらでもあります。
初心者がまず読むべき一冊とは?
――なるほど、心して勉強させて頂きたいと思いますが、初心者の場合はまずどの本からチャレンジすればいいでしょう?
武田 まず揃えて頂きたいのは『玄秘修法奥伝』と『神法道術秘伝』の2冊です。この神法道術シリーズは古くからのお客様はほとんどお持ちなので、品切れになると増刷までに1年はお待たせすることになります。いまシリーズでは『玄想法秘儀』が品切れですが、幸いこの2冊は揃って在庫しておりますので、お持ちでない方はいまのうちに必ずご購入頂きたいのです。
――『玄秘修法奥伝』の重要性はいまお話頂いた竜神印とか伊邪那岐大神の印からもわかります。印を結ぶというと密教ばかりだと思っておりましたが、神道にも印があるんですね。
武田 一般には知られてないだけです。密教の印咒が仏仙界に由来するのに対して、古神道の印咒は神仙界から現界に招来されたもので、古語では「つまぐしのちぎり」と言います。
――つまぐしのちぎり……
武田 「奇霊なる指を以てなす神霊との約束」という意味です。幽契ある秘印を結ぶことによって、特定の神霊の感応を得ることができるのです。これは『玄秘修法奥伝』にしか公開されておりません。ですからこの本は大事なんです。神社神道は表の神道、仏教でいう「顕教」です。古神道は仏教でいう「密教」に相当します。ただこの道は仏教系の密教よりさらに奥が深く、一部の修道士のあいだでのみ口伝で伝えられてきたのです。
――『玄秘修法奥伝』が刊行されるまで誰も知らなかった……
武田 そうです。ですから『玄秘修法奥伝』を三十年前に刊行したときは、神道界に大変な衝撃が走りました。神道系の印というものがあるらしいが、そこらの神社に聞いてもわからない、はたして本当にそんなものが存在するのだろうか、そんな状況だったわけです。そういうことを知らない今の人たちは、1万2千円が高いの安いのとおっしゃるわけですが、とんでもない話で、当時これは百万円の値打ちがあると評されました。
――たしかに誰も知らなかった古神道の秘印が百法も収録されているわけですから当然ですね。
武田 はい。それも富貴印、諸業成就印、除災印、除貧印、除病印、招宝印など、日常生活にただちに活用できる印、神社参拝に用いて霊験抜群の清浄利仙君直授の密印、水を清める玄水印、お土取り、お水取りなど気学方面に応験のある五元神印、骨董品や仏像に憑依する霊物を除霊し、神璽や御札のお焚きあげに効ある送神印、運気転換の相生印、相剋印、占断に用いる神占印はじめ、陰魔送神印、注連印、天八降魂尊印、伊邪那岐大神印、天照大御神印、龍神印、神降しの印、降敵印、伏敵印など、親切な図解入りなので、初心者からプロまで十二分に活用できます。また、付録として密教系の九字とは異なる真伝を伝授する「九字真法伝」に加え、古書店で数万円する稀書「橘家守符封之伝」も収録しています。
古神道印咒に加えて秘伝の霊符を紹介した秘著
――なるほど、たいへんな本なのですね。
武田 それからもう一つ。『玄秘修法奥伝』が重要なのは霊符です。霊符に関しては『霊符秘密集伝』があります。副題に「一名 国乃宝」とあるように誠に貴重なもので、筋の良い霊符が339符も収録されています。霊符本としては決定版ですが、明治に刊行されたもので、あくまでプロ仕様で、霊符浄書の作法などの説明はありません。それで『玄秘修法奥伝』では先生にこれでもかというくらいに詳しく霊符浄書法について書いて頂きました。筆、墨、紙の選び方、浄書に必要な天之真名井水の作り方、不要となった霊符の処分法から、浄書の秘訣や筆順、霊符の包み方、霊符観想凝念法、霊符開眼神法等の神法、符術施行の要点まで、詳細に解説され、Q&Aまでついています。
――なるほど霊符を謹製するのにも絶対に『玄秘修法奥伝』は必要なんですね。
武田 はい、霊符にかぎらず、神法道術には符書が必要なものは多いですから。霊符そのものも、霊災除符、生霊不来符、祓霊符、妖気除符、通仙符、呪詛返し符、招福符、招財符、長寿符、諸病一粒符、商売繁盛符、心願成就符、子孫長久符、男女縁・長久和合符、縁切符、帰順符など約百符を収録。どれも未公開のもので、これだけでも貴重です。
神法道術の初伝から奥伝まで
――では次に『神法道術秘伝』について説明して下さい。
武田 『神法道術秘伝』は、相当の奥伝まで公開した本ですが、同時に初心者のため、神事作法の基本はもとより神法道術の実践上の心構えやコツも伝授し、これから古神道を学びたい人のための入門編としても最適の内容になっています。
神法道術には符法、印法、咒法、念法、麻自物法と、それらを組み合わせて構成される式法があります。『玄秘修法奥伝』は符法、印法、咒法が中心ですが、『神法道術秘伝』は、式法と行法を中心にその他の法も含め広くカバーしています。
皆さんがお知りになりたい各種の秘術に関しては、「神法道術類簒」という章に約五十法を収録。たとえば切火・切水・祓幣による清祓秘事はあらゆる神法道術を施行する際に必要な修法です。さらに人形(ひとがた)を用いて異性の関心を誘因する恋愛成就秘法、富を招く五元之浮宝伝、五岳真形図祭祀法、危篤病者にも神験ある神伝言寿魂返法、宮地神仙道秘伝の我運顕現秘法、ケガレチを清める桃陣秘伝、邪気を祓う蟇目神伝、普通の水を神水に変える大中臣家の神水伝、清浄利仙君伝の霊縛神法、悪霊落秘法、忌部伝の守護符謹製法、八握剣行事伝、蔭針咒法、山形老仙伝の霊胎凝結秘法、移霊秘法、元覧人鳥山形図神仙界出入秘法などの密伝が、これでもかというばかりに収録されています。
――それこそ、その中の一法でも自家薬籠中のもの出来ればしめたものですね。
武田 そういうことです。さらに『神法道術秘伝』は、山口志道の神風伯秘伝、忌部鎮魂伝、本田流の鎮魂帰神法(これは別伝まで収録し非常に貴重です)、松本道別伝の燭火鎮魂法、荒深道斉伝の鎮魂法、松原皎月伝の陽気吸収法、宮永雄太郎伝の数息鎮魂術、伊吹法、石上鎮魂法、伯家行法、平田篤胤の久延彦之伝など、主な古神道行法を網羅し、岩笛秘伝についても詳述、「言霊秘詞抄」には宮地水位先生伝の咒歌を多数収録し、「神通霊符拾遺」には神法道術を修する人が身につけて必ず感応ある神通符六種はじめ、未公開の霊符約五十符が収録されています。
――ずいぶん内容が豊富ですね。
武田 それだけではないですよ。とどめに、橘折符という太古真法奥伝の神折符(かみおりふ)まで収録されています。これを年始に謹製し祭祀すれば、その年に確実に寿福をもたらすという誠に貴重な折符です。
――至れりつくせりですね。神折符というと『太古真法玄義』だけかと思っておりましたが、『神法道術秘伝』にも奥伝が収録されているんですね。
武田 そうです。ただこの橘折符の伝をきちんとマスターするためには、やはり『太古真法玄義』も必要になってきます。
伊勢斎宮 神折符の秘密を伝授!
――神折符を基本からしっかり身につけるためにはやはり『太古真法玄義』ということですね。
武田 『太古真法玄義』の刊行は平成2年のことで、これも当時の古神道界に衝撃を与えました。霊符は普通は墨や朱墨で書くわけですが、一枚の和紙を折って神符をつくる秘伝が存在するということは噂には聞いていても、それが具体的にはどんなものか、ほとんどの人はまったく知らなかったわけですから。
――それまでは口伝でのみ一部に伝えられていたわけですね。
武田 そうなんです。しかも伝を受けるといっても、これは他の神法道術以上にたいへんなんです。『太古真法玄義』みたいに図解にした伝書があったわけではないですから。先師が一回だけ折るのを見て、その場で覚えなければならないのです。
――普通の人間ではとても無理ですね。
武田 それが大宮先生の頭には、何百種類もの神折符の折り方の手順と施行法がすべて入っている。それだけでも驚異的です。
――すごいですね。それだけにやはり神折符は素人には難しいのでしょうか?
武田 いえ、皆さんには一回見ただけで覚えろというわけではありませんから簡単です。『太古真法玄義』には折り方の手順が親切な図解入りでわかりやすく説明されています。たった一枚の和紙があればいいので、筆も墨もいりません。ですから霊符を浄書するよりもむしろ簡単です。「神通は信と不信とにあり」という心で、素直に折っていけばよいわけです。
『太古真法玄義』には、鎮魂符、願望成就符、除災招福符、蓄財符、商売繁盛符、恋愛成就符、就職達成符、入学祈願符、病難除符、家内安全符、辟障符、霊魂安鎮符、和合符、厄除け符、病難除符、魔除符、生霊除符、事故除符と、一般の方から専門家まで必要な神折符が厳選収録されています。ですからきわめて実用的で初心者向けの一冊ともいえます。これ一冊あれば日常生活においても霊的な面においても、絶対に不自由はしません。本来ならば一符につき伝法料数万円から数十万という貴重なものばかりなので、存分に活用して頂ければと思います。
また重要なのは、清め包みの伝。霊符や神折符を剥き出しで所持してはなりません。必ず本書掲載の清め包みで包んで下さい。これは基本ですので必ず覚えましょう。人に封書で霊符や神折符を送る場合も、必ず清め包みで包んで送るようにして下さい。
さらに『太古真法玄義』ではたいへん大事な伝が伝授されています。玄気発現法と神符効能審神法です。
霊気を強化する法、霊符の効能を調べる法
――玄気発現法とは?
武田 霊気を強化する修法です。神折符も霊符も手順通りに謹製すれば必ず効果はありますが、やはり人によってその強弱はあります。神法道術全般についても同じです。それは施行する人の霊気によるものです。ですから日々、この玄気発現法を修して霊気を強化すれば、それだけ符も威力を増すわけです。
――神符効能審神法とは?
武田 自分で作った神折符や霊符はもちろん、神社で頂いた神符や一般に流布している霊符類に広く適用できる簡単で、そして絶対に間違うことのない鑑定法です。神折符はその通りに作れば必ず効果はあります。しかし日の巡りや体調により影響を受けたり、大量に作った場合などは、本来の神験を十分に発揮できないこともあります。なので不安な場合は効能審神法で確認して、真に霊的に賦活された符のみを用いればいいわけです。
――神社やお寺で授与された神符やお守りなどもこれで判定できるわけですね。
武田 神社やお寺のお守りや神符でもこの鑑定法を適用すれば、何の神威も籠もってない死符や虚符があることがわかります。
――これは困る神社仏閣もあるでしょうね。
武田 そうですね。ですから道場や教会をやってる方は、人に頼まれて神符、霊符、折符を授与する場合は、この方法で的確な感応があるかどうかを確認したほうがいいでしょう。
――さきほどあげられた折符に霊魂安鎮符というのがありましたが、霊魂を安鎮するというのはどういう意味でしょうか?
武田 これは祖霊祭祀に用いる神折符です。祖霊の霊魂を安鎮する、つまり祖霊を冥罪を消滅し悪因縁を解消してその霊格を向上せしめるための符です。本書ではとくに一章を設けて、その施行法を説明しております。これは必ずしも神道式の御霊舎ではなくても仏壇でも施行できます。
――これも至れり尽くせりの内容ですね。
武田 さらに本書で大宮先生は言霊、鎮魂法、古武道、太占、易、気学、家相、手相にまで広く言及しておられますので、これ1冊あれば霊学全般を広くかつ深く見通せると思います。
――ところで太古真法はもともと伊勢神宮が発祥とか?
武田 伊勢神宮ではなく伊勢の斎宮です。古代では未婚の皇女を神に奉仕する御杖代(シャーマン)として立てました。その斎王のおられた宮廷が斎宮。ここで斎王は神折符を折りながら修行され、神界と現界を自在に往来したと伝えられます。
ですから太古真法はまた斎宮神法とも言います。様々な伝承ルートがありますが、松浦家伝では天孫降臨とともに三種の神器につけて地上にもたらされ、伊勢斎宮の姫君が密かに護持し、南北朝以降に松浦家等に伝わり、今日に至ったということです。『太古真法玄義』ではそのあたりも説明していますが、詳しくお知りになりたい方は、松浦彦操『神典形象』(みふみかたどり)(P.5 参照)もお読みになるとよいでしょう。原本は昭和15年に刊行され、折符というものがある、斎宮神法というものがあるということはこの本を通じて知った方が多かったのですが、私がこの道に入った頃には希少本で入手にずいぶん苦労しました。それで今から20年ほど前に復刻して多くの方に感謝されました。
映像で神法道術の秘儀を学ぶ!
――『実践 太古真法 神符秘伝』というDVDもありますね。
武田 折る手順が本だけではわかりにくいという方のために制作しました。書籍『太古真法玄義』と重ならないように、本には未収録の秘伝の神折符が中心になっているのでお買い得です。このDVDでしっかり勉強すれば、『太古真法玄義』所収の神折符の折り方も理解しやすくなります。折符を作るうえでいちばん大切なことは、一気に折り上げることです。そのためには、このDVDで徹底的に練習して下さい。そうすると『太古真法玄義』の図解を見ても、自然に頭に入るようになります。
なお、少しでも多くの方に神折符になじんで頂きたいので、ふつうの折紙からでも入りやすいように、『幸せを呼ぶ折紙の秘密』という本も先生に書いて頂いております。
――『神法十種神宝秘玄』というDVDありますね。
武田 ニギハヤヒノミコトが天降られる時に、天照大御神から授けられた十の神宝を十種神宝と言います。これに淵源する十種神宝の秘図があり、これは比較的知られてますが、実はその秘図の力を賦活する秘印と一連の修法があります。これは世の表には出ず、密かに裏の神道の流れにのみ伝えられてきました。この修法は一連の動作を含むもので、公開するにあたって、書物では説明が困難なのでDVDにさせて頂いたわけです。
これも最初にVHSで出たときには神道界に激震が走りました。十種神宝の秘印や式法など、その存在すら知っている神職などいなかったので当然です。
また、DVDの後半は神秘的なフラクタル映像の背後で、大宮司朗先生自ら十種神宝の密咒を唱えて頂いておりますので、視聴するだけで体内霊気が賦活されます。ぜひご活用下さい。
霊符・神折符に使用する和紙も頒布!
――ところで太古真法にしても霊符にしても、和紙は必需品だと思うのですが、どこで入手すればいいのでしょう?
武田 和紙を扱う店舗も少なくなりました。また本格的な和紙を入手しても大きさや寸法比は千差万別です。そのために太古真法には紙合わせの伝がありますが、出来ればすぐにその場で使える和紙があればというご要望があって、『神法和紙セット』(P.23参照)を販売しております。これは高級な石州楮和紙をあらかじめ紙合わせの伝に則って裁断したもので、お守り袋に入れて持ち運ぶことを考慮した【B7サイズ】75枚、神棚などに奉斎することを考慮した【B4サイズ】50枚が1セットになっています。
言霊を自家薬籠中のものにする深秘の書
――それはありがたいですね。ところで、よく言霊ということを耳にしますが、『言霊言修秘伝』はどんな内容ですか?
武田 『言霊言修秘伝』の刊行は平成七年。これも当時の神道界に激震が走りました。言霊については、弊社は大石凝真素美と山口志道で先鞭をつけてきました。これも画期的で神道界ではこんな秘伝があったのかと驚かれましたが、さらに実際に言霊を出す修法があるなんてことは誰も想像もつかなかったのです。
出口王仁三郎はトランス状態に入ると、蚕が糸を吐くように無限に和歌を詠み続けましたが、その秘密を解明したのが『言霊言修秘伝』です。キリスト教でいう異言(グロッサリア)とも関連しますが、口から無意識下のコトバが発せられ、それが集合的無意識界からのコトバになり、そしてついには神のコトバを発する、その方法が「言霊神感法」として本書ではじめて開示されたのです。というとすごく難しく感じられるかわかりませんが、一言、三言、五言とシステマティックに発声を積み重ねると、やがて自然に言霊が和歌の形式で湧いてきます。それが時によって、神霊からのお気づけとなり予言ともなり啓示ともなりうるのです。
そしてもう一つが「言霊神呪法」です。これは『太古真法玄義』でも開示された玄気発現法が基本となります。その上に真寿鏡霊法を修して行ずるのです。これに則って言霊を発することで、その言霊の威振によって自らの願望を成就するわけです。
――なるほど。言霊神感法と言霊神呪法、これだけでも凄そうですが、目次を見るとずいぶん盛沢山ですね。例えば、「霊符活玄言霊大秘法」というのはどういう神法なのでしょう。
武田 言霊の力によって霊符を開眼するたいへん重要な修法です。霊符は基本的には浄書すればよいのですが、教会や道場ではやはり開眼修法が必要な場合があります。開眼修法は『玄秘修法奥伝』にもありますが、これはもっと簡単で、言霊力があれば、正式な開眼修法とほぼ同等の効力を得ることができるというものです。
さらに言霊力によって自分や他者の病を癒す「言霊治療法」、言霊によって霊力を発現し、その霊力を空間を隔てた第三者に感通させ、また金属、紐、糸などの物質に宿らせ、それに接触した第三者を感応させる「霊感玄通法」、言霊により霊風を起こす「霊風発玄法」等の奇霊な妙術が豊富に収録されています。
――『言霊玄修秘伝』には「特伝秘咒」として即座に霊験のある秘咒約二十数法が収録されていると案内にありましたが、こういう咒は言霊の力が十分でなくても効験が期待できるのでしょうか。
武田 宮地水位先生伝をはじめ、旧家古社に伝わる秘咒の中から筋の良い咒を大宮先生に厳選して頂きました。こういう秘咒には神界との幽契があり、言霊の力がない人が唱えても功徳は十分にあります。それは大祓詞などでも同じことです。しかし言霊神呪法を習得し言霊力を鍛えれば、さらに著しい効験が得られるでしょう。
なお、『言霊玄修秘伝』には清浄利仙君直伝の印と咒も収録されています。これは『玄秘修法奥伝』では神拝三印のみの伝授でしたが、『言霊玄修秘伝』では避魔、安鎮、入山など、七印が、咒とともに伝授されています。これだけでもたいへんな値打ちものです。
特別伝法も収録した禁厭の秘書
――『禁厭秘帖』はどんな内容ですか?
武田 禁厭とはすなわち「まじなひ」です。俗世間に流布している「まじない」には、何の根拠もない愚にもつかないものが多いため、とかく「まじなひ」というと軽くみられがちですが、本当の「まじなひ」は立派な神法道術です。禁厭の「禁」は禁止、「厭」は鎮壓(圧)で、つまりは災いを抑え止め、害を抑え止めるという意味です。ですから、霊符や咒などで一定の式法を伴わないものも含めて、斯道では禁厭と言ったりもします。
平田篤胤はマジナヒの「マジ」は「交わる」の「マジ」と同じで、「彼方の体に此方の霊を交ふる意」であるとし、宮地水位先生もマジナヒとは「交え合わす義」であるとされ、様々な「まじなひ」を蒐集し深く研究されました。ある「まじなひ」一法を入手するため、その所持者と数年にわたって交際を続け、その人が金銭的に困難になった時を見計らい万金を積んで入手されたという逸話があるくらいです。本来はそれぐらいのことをしなければ、たったひとつの簡単な禁厭や秘言すら入手できないのです。
本書は、その宮地水位先生の禁断の秘書『禁厭秘辞』『禁厭集』を土台に、大宮先生が禁厭の玄理、歴史、実践のコツなどをわかりやすく解説し、さらにこの二著や通常の人の目に触れることのない稀覯書の中から、一定の信憑があると判断された「まじなひ」を撰び収録したもので、これまで公開されることのなかった重秘のものもかなり含まれております。
少し例をあげますと、強運符、訴訟に勝利を得る符、振り替えしの秘法、諸病治符、憑霊判断法、縁切り法、竈神符、男と手を切る法、商売吉祥符、福を招く符、方災除けの札、神桃術、防妖魅符、辻占法、呪咀返し、十字の大事、憑物道切符、病人の生死を見わける法、寿命百歳を保つ符、狐狸退散法、辟呪咀符、伝染病を避ける法など、八十二法が収録されています。
多忙な現代生活においては、最初から厳重な手順の多い式法に接しても容易に実践できないこともままあります。その意味で手軽に実践できる禁厭(まじなひ)は、より集中力が要求される式法へと進む階梯としてふさわしいものともいえます。もちろん複雑だから偉い、簡単だから軽いというようなことはありません。むしろ、一発の「まじなひ」が、心のこもらぬ、神人の気が交じりあわぬ祈祷にまさる応験をもたらすことも往々にしてあるので、そこは心して修して頂きたいと思います。
さらに本書の最大の目玉として「特別伝法」として、神呪三法が収録されています。これは私から先生に特別にお願いしました。この三法はその名称そのものすら秘事で、誓約書を頂きたいくらいの密伝なので、だからこそ「特別伝法」なのです。内容的には「願望を神界に到達せるための神呪」「あらゆることに勝利を得るための秘言」「祈願の念意が神仙界に感通する神呪」の三つの神呪です。これだけでも値千金であると断言できます。
武田社主が神法道術のコツを徹底解説
――最後に武田社主の「大宮司朗先生の神法道術直伝シリーズを読む」というDVDについて一言お願いします。
武田 このDVDは『玄秘修法奥伝』『神法道術秘伝』をお持ちの方を対象としています。神法道術シリーズは初心者にもわかりやすいように配慮されています。本文はすべて現代語で漢字も新漢字です。しかしやはり咒や祝詞は歴史的仮名遣いなので、戸惑う方もおられます。また『玄秘修法奥伝』に所収の五元神の印なども、陰陽五行の基本概念をよく理解しないとぴんと来ないところもあります。あるいは神名などに関しても、これは古事記のどこそこということまでは説明はされていません。そういう基礎教養的な部分も含めて補完するのがこのDVDの一つのポイントですが、ついつい本にはないコツや秘儀に触れているところもあるやも知れません。ですからDVD単独でも古神道の基本を学べる内容となっていますが、『玄秘修法奥伝』『神法道術秘伝』をテキストとしての説明なので、できればこの二冊をお手元に置きながら視聴して頂くのがいちばんかと思います。
――いろんなお話をお伺いしてきましたが、『玄秘修法奥伝』の印法といい、『太古真法玄義』の神折符といい、『言霊言修秘伝』の言霊神感法といい、すべて公開当初は衝撃的だったというのがとても印象に残りました。
武田 そうですね。それらが今ではこういうふうに一同に会して並んでいますので、神法道術を学ぶということに関しては、今の方は三十年前にくらべてずいぶんと学びやすい環境だと思います。ぜひ積極的に取り組んで頂きたいと願う所存です。v